山乃井木工房:岩井雄介のいま何作ってましたっけ

京都丹波(京丹波町)の山村で木工をするあるつくり手の備忘録

機械設備に投資をしないのならば体で払うしかない

今日も随分と暑くなりました。そんな中、案の定、体力のみ必要な仕事が続きます。

生長著しい長ナスの畝を作らなければいけません。もちろん、マルチに支柱付き。

マルチャーがあれば一日に1反ほどの面積は畝立てとマルチ張りができますが、そのような機械設備に投資ができていない、しがないおじさんは鍬と体力でカバーするしかありません。

・・・お金が払えないのならば、体で払うほかない(マルチ幅95㎝が張れるマルチャーは100万円もあれば買えるんだけどね)。

まずは管理機で畝とマルチ押さえ用の両脇の土を造成していきます。

今日のノルマは長さ20mちょっとの畝が11本(←農家さんから見れば遊びみたいな量ですけどね)。

昨日のうちにトラクターで耕しておいた土はしっかりと乾いていて、作業はしやすいです。

寄せて上げるタイプの畝立てではなくて、真ん中を掻き分ける畝立てなので、畝の形をトンボで台形に整える必要があります。

この時に、管理機で突いた溝がへたくそで曲がっていると、幅を直さなければいけません。

しかし、今日は思いのほか管理機の管理者の調子が良かったのか、ここでは時短ができました。

そして、メインのマルチ張り↓

マルチの桎梏、じゃなかった漆黒が日差しを吸収して暑さ倍増だぜ。

ところで、私が使うのはいつも生分解マルチです。

前にも書きましたが、価格はビニールマルチの3倍くらいします。それでも、後片付けがいらないので、作業上の費用対効果だけでも元が取れると思っています。

近所のお年寄りも「それ、なくなるんか?」と訊いてきて、「片付けがいらないのはいいなあ。マルチは後片付けがかなわんのだ」と、私に何回も言います。

でも、「値段は3倍くらいしますよ」と言うと、家庭菜園くらいの規模ですら諦めてしまいます。

ご存じの通り、海洋におけるマイクロプラスチックの供給源として、農業分野は大きな比重を占めています。

もちろん、これには意図せざる流出も含まれているわけで、故意に投棄していないからといって、生産者がその管理責任を免れることはありません。

生産者が日頃から常に意識しなければならないところであると思っていますが、少なくともマルチの生分解材の使用は、マイクロプラスチックを農業生産者が供給しないという点において、非常に有効的であると言えます(最近では農研機構でもそのようなシンポジウムがあったようです。https://www.naro.go.jp/event/list/2024/02/161316.html

ここからは意見としてですが、農業に対する補助金はこのような技術進展や普及に充てられるべきではないでしょうか。

価格がネックとなっていて(無論、本来は個々の生産者及び趣味を嗜む人々が例え価格によって負のインセンティブが働いたとしても、コストパフォーマンスや社会的責任において合理的に判断するのが望ましいのではあるが)、その普及が進まずに環境負荷(というか汚染)が継続されているのは正直意味が分かりません。

ここで、このような社会変革や変化を促す政策として、比較検討されるべきとすぐに思い浮かぶのは「省エネ賦課金」と「経営所得安定対策」でしょう。

前者の省エネ賦課金は電気代に含まれる再生エネルギー(による発電施設)普及を目指すもので説明は省略できるところですが、その資金の回収(「徴収」と言うと語弊が生じそう…)に関しては金額等の妥当性については別とすれば明確であると思われます。

問題はその配分先が望まれる(安定で上質な)電力構成に寄与しているかの是非や、また国内の技術向上や産業波及効果に関しても絶えざる検討が必要と思われ、事実、この諸問題が現時点で噴出しているところであり、このような資源配分による社会変革の難しさを感じます。

一方で、後者の経営所得安定対策はこの国の第一次産業を守る目的で行われいる「支出」です。

作物価格の内外差に起因する国内産業の衰退対策として、第一次産業の保護、さらには食料自給率の一定程度の確保という目的は概ね評価されるべきと思います。

数量払は生産量向上へのインセンティブを保持するものと理解できますが、面積に対して支払われる分に関してはその有効性を様々な場面で検証する必要があるのではないでしょうか。

さらに、水田活用の直接支払い交付金に関しては、自治体分の上乗せも含めてほぼ戸別補償的な意味合いを持っています。

もちろん、それによって維持される田畑、農村、地方風景も多いものと思いますが、果たしてそれはこのダウンサイジングの時代において適切に運営できているものばかりでしょうか?

先日は「ブラックホール自治体」が注目されましたが、地方には地方の別の形でのブラックホールが存在しているかもしれません。

・・・と、補助金についての難しさを考えながらマルチ張りという単純な超肉体労働を続けました。

おかげで、畝11本の全てが海苔弁当に。

あっ、こんなところに鍬を落としたことによる穴が↓

これが内装業者だったらクロスの貼り直しだよ。

夕方までに植えるための穴を開けて、杭と網を配り終えることができました。

・・・今日はほんとに疲れたなあ。