山乃井木工房:岩井雄介のいま何作ってましたっけ

京都丹波(京丹波町)の山村で木工をするあるつくり手の備忘録

そろそろ次に取り掛かりましょう

秋になり、頭の中はきのこのことでいっぱいです。

きのこのことを考えているだけで、とても幸せな気分になります。

・・・

ああ、そうそう、木工の制作ね。

引き出しその他の捨て摺りが乾いたので、その空研ぎです。

・・・シャカシャカシャカ・・・

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そののち、拭き漆をして、再びムロの中に消えてもらいました。

この2ヶ月以上の期間、衣装箪笥とスツールの栗の鑿斫り(のみはつり)の写真ばかり投稿していたので、ちょっと、もとい、だいぶマンネリ化していました。

今日は次に作るものの木取りの写真を投稿できます。

CADの体験版の有効期限が切れる前に描き上げた図面から、必要な部材の寸法を出して、それをもとに木材小屋から材料を出してきます。

次に作るものは、「桧(ひのき)天板のちょっと小さめの片袖机」です。

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ちょっと小さめ、と言っても机(デスク)なので幅が50㎝あります。

そのため、天板は矧ぎ合せる(はぎあわせる)必要があります。

矧ぎ合せる際は、板目(いため)よりも柾目(まさめ)の方が木材性質上推奨されるため、上の写真の板も「縦に」割る必要がありますが、材料を取る位置が左右で違うために先に「切る」ことができません。

4m材の長いままだとバンドソーで挽けないため、しょうがないので、えっちらおっちらチェーンソーで割ります。

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長い道のりでしたが、桧なのでサクサク進みました。

引き出しの内板と背板・側板は同じく桧とそして杉にするので、一緒に出してきて、こちらも玉切りしました。

 

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ここから新しいスタートです。

榾起こし

10月なのに真夏日になるような天候で、太陽が早く沈むこと以外は秋の訪れを忘れてしまいそうです。

とはいえ、暦の上では寒露も近く、シイタケ栽培にとっては榾起こし(ほだおこし)の時期です。

今年の春植菌した榾木を本伏せの井桁組(いげたぐみ)からシイタケ栽培らしく起こして合掌させます。

まずはパイプを買ってきて、架けるところを作ります。

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そして、性質の違いが分かるように品種ごとに並べていきます。

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ほら、シイタケ栽培らしくなったでしょう。

まあ、300本余しかありませんが…。

2か月ぶりに榾木を触ってみて(もちろん、ときどき水遣りはしてたけど)、残念なことも発見しました。

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・・・シイタケを育てているつもりがダイダイタケが大いに繁殖しています。

う~ん、「害菌でわかる榾場の様子」によると「高温多湿」であったようです。

来年の教訓としては、榾中の水分が少なくなるように原木の含水率を下げるよう計画しなければなりません。

もちろん、6・7・8月の管理も改善していきましょう。

気の早い榾木では芽切りをしているものもありました↓

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まあ、おませさん、・・・そういう品種なのだけれど。

平年並みに気温が下がって、ややまとまった降水が待ち望まれます。

箪笥の木地が揃いました

もう2ヶ月ほど作っている(いつまでやっているんだ?)衣装箪笥もようやくの事、木地作りの佳境、引き出しに取り掛かりました。

材料の寸法を出したら仕口の加工をします。

・・・

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引き出し材は桐ですが、写真のように蟻組(ありくみ)にしました。

前板の栗の突板が厚く、環境の変化(湿度)を受けて前板が反ることのないようにしたかったのです。

余談ですが、作り手の皆さんの多くの方が同じ意見と思いますが、一般的な袖机等の引き出しの大きさは、機械で蟻組の仕口を加工するのに適した大きさです。

私は、ルーター加工で完結する「丸くなった蟻型」、すなわち建築プレカットの蟻鎌の形ではなく、写真のように「表からも裏からも蟻型」にしています。

どちらの蟻組でもこれくらいの大きさが機械加工(零細事業規模)に適した大きさで、この時の加工には今では大した機械は必須ではありません。

また、蟻組は板同士の直角接合の中でメリットが大きい組み方(仕口)でもあります。

誤解を恐れずに言えば、引き出し材をネジ等で接合しているのは昭和時代の組み方ともいえるかもしれません。

もちろん、桐材の場合は形式にのっとり、3枚ないし5枚の平組の木釘打ちでもよいと思います。

同様に、仮にせっかく手加工で引き出しサイズの蟻組をするならば、蟻部を細くした「天秤組」等の手わざを配したものにする必要があります。

そんな感じで、昭和時代産の私も時代に追いついていこうとしています。

長くなりましたが、桐材なので補強と「ちゃんとやってます」の意味も込めて木釘を打ちます。

・・・コンコンコン・・・

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ちなみに、今回は引き出し容量が大きく荷重がかかるので、底板は形式通りの「下からの打ち付け」ではなく「嵌め殺し」にしました。

接着剤が乾いたら木釘の飛び出ている部分と目違いを払って、引き出しが本体に納まることを確認して、すべての木地の出来上がり。

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感慨に浸る間もなく、とっとと完成させるべく拭き漆をしました。

取っ手は2つしか使わないのです

今回、取っ手は2つしか使わないのですが、機械で作る都合上、ある程度の数をまとめた方が都合が良いのです。

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・・・と、面取りの荒取りまで、一部を除いて機械作業でやってきました。

ここからは手仕事です↓

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3Dソリッドのサーフェス編集をしております。

豆鉋で表面のカーブを改めて出したら、今度はサンドペーパーでの磨きです。

ウォールナットはサンドペーパーと相性がいいので、木工作家的には少々がっかりですが「がっつり」ペーパー作業。

・・・シャカシャカシャカ・・・

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・・・形もなかなかいい感じ。

恥ずかしい話、私がCADで描ける図面が2Dなので、実物ができるまで全体の印象がつかみにくいのです。

取っ手のように、体積を大きく削って面取りを大きくとるような造形の場合、三面図よりも「だいぶ太くなったor細くなった」のような予定とのズレが大きくなることが多いのです。

今回の取っ手は全体的に良いバランスです(毎回、こんな感じに収まらなければいけないのですがね)。

衣装箪笥は黒い外観なので、取っ手も拭き漆で黒くします。

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14本ほどと数が少ないので、すべてを黒の拭き漆でしてしまいました。

木地色は今度、機会があれば作ることとしましょう。

ムロの上段に写っているのはスツールの脚ですが、これは5回目の拭き漆です。

脚は漆の「載り」が悪かったので今日も拭き漆をしましたが、その他の部材は十分に思われたので組み立てに入ります。

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↑蟻桟を通して、埋木をしました。

とっても、とっても

昨日は今年最後の草刈りをしました。

今回の草刈りで家と作業場の周りをきれいにして冬を迎えるので、「大きな草刈り」です。

朝の6時半から夕方までかかりました。

幸いに気温もそんなに高くなく、陽も陰りがちだったので助かりました。

混合燃料にして2ℓ弱ほどの草刈りですが、昨日は一日それ以外は何もできませんでした。

彼岸花がちょうど見頃になっています。

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いつもながら不思議な植物です。

なんだかここ数年、家の周りの彼岸花が増えている気がする・・・。

こいつらどうやって増えていくんだろう?

増えているといえば、今年は作業場によくスズメバチが入ってきます。

日中だったら、シャッターを全開にして自然と出ていくのを待ちますが、陽が沈むとなかなか出て行ってくれないので、今日は集塵機で吸ってやりました。

集塵機のホースを持って5分ほど追いかけまわるのどかな作業場…。

栗の衣装箪笥の扉は框の表面に斫りを入れて、それ以外には仕上げ鉋を掛けてサンダーをあてました。

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この扉には既にある取っ手が似合うので良いのですが、これから作る引き出しには似合う取っ手がありません。

そこで、ウォールナットで作ります。

本体も大好きですが、♪とっても、取っ手も、・・・、大好きだから

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今のところ、基本的に私は取っ手をウォールナットで作ります。

理由としては、唐木(からき:黒檀や紫檀など)に比べて加工性が良く、比較的安価だからです。

唐木は高くてとても手が出せません。加工もとても難儀で手に負えません。

それと、ウォールナットは色が黒いので、木地色で使っても様になりますし、使用によって擦れてきてもあまり目立ちません。

また、多くの環孔材のように、導管による目切れも心配ありません。

とはいえ、ウォールナットもそれなりに高価になりました。

もちろん、割合に細かな造作となるので、現地KDではなくて国内挽きを使うようにしています。

ラグビーボウルって面白いですね

ラグビーはあんまりルールがわからないけど、ラグビーボウルは好きです(もちろん、ラグビー自体も面白いよね)。

ボールって遠くに飛んだり転がったりするために合理的な「球体」を求めるにもかかわらず、ラグビーボウルはむしろ「うまく飛ばない転がらない」ことを希求しています。

蹴っても、転がしても目的のところにうまくたどり着かない…。

ボールに偶発性を持たせることで、ゲーム上での偶発性に「賭ける」ことや偶発的な得点を排除していることが全体を通して合理的。

そのため、ラグビーで「まぐれ」が極端に少ない理由と解しています。

そんな論理展開を通じて、ラグビーボウルがとても面白いです。

一昨日は栗のスツールの捨て摺りをしました↓

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そして昨日は市日だったのでお出かけしました。

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今回は振り出し(競りの開始)に間に合いました。

そしてチップの値段でたぶんセンノキを落札しました。

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なぜか「イタヤカエデ」と書いてあるけどこれはたぶん「センノキ」(シオジではないと思う)。

内地のセンノキなので色は浅黒く、「オニ」がかっています。

格安だったし、小径木出しどれだけ用材になるでしょうか。

そして、昨日はその後に大阪南港に行ってウォールナットをちょっと買ってきました(取っ手を作りたいの)。

そのため昨日はほとんどドライブ、ドライブ日和だったしね。

今日はというと、栗の衣装箪笥は躯体の接着が終わったので、扉などを作り始めました。

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1棹なので、パーツを機械で作るのは手間です・・・。

特に取っ手位置のネジ穴や蝶番の彫り込みなどで時間を取られます。

ちなみに、真ん中の黒い部分は、定木口(じょうぎぐち:扉が合わさる部分で合わせ目の隙間を隠す材)を戸框(とがまち)から作り出しで取ったので、昇降盤で焦げた跡です…。

そして栗のスツールの捨て摺りが乾いたのでサンドペーパーで研ぎました。

・・・シャカシャカシャカ・・・

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再び拭き漆をしてムロに舞い戻りました↓

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はじめの写真とほとんど違いがありませんが、若干ピントが合っている?

玄関開けたら2歩で

ここのところ祝日ばかりで曜日の感覚がありません。

今日は何曜日でしたっけ?

その前に、僕の気分はいつも夏休みだから曜日の感覚がないのかな。

衣装箪笥の躯体の最後の組み立てを嫁さんに手伝ってもらってやり終えました↓

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玄関開けたら2歩で衣装箪笥です。

♪玄関開けたら、2分でごはん、玄関開けたら、サ〇ウのごはん・・・

頭の中でこのメロディーがエンドレスリピートです。

夜中トイレに起きたときにぶつかりそうですが、とりあえず接着剤がしっかりと固まるまで、3日間くらい固定しておきます。

その間は再び栗の「適当な感じの」スツールです。

・・・コンコンコン・・・

ただひたすらに鑿で斫り続けること数時間…。

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ようやくのことで、すべての部材に斫り目をつけることができました。

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集約型労働の残骸が床に堆積しています(斫り屑)。

そして、木地作り最後の工程の面取り。

こちらも「無骨」にするために小刀で不規則に取っていきます。

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材料が栗なので、鑿での斫り作業もそうですが、小刀も進めやすいです。

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これで、木地は完成(正確には蟻桟の埋木がまだだけど)、明日には拭き漆を始めます。

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そんな間に座面の拭き漆は捨て摺りを含めて4回目までいきました。