山乃井木工房:岩井雄介のいま何作ってましたっけ

京都丹波(京丹波町)の山村で木工をするあるつくり手の備忘録

箪笥の木地が揃いました

もう2ヶ月ほど作っている(いつまでやっているんだ?)衣装箪笥もようやくの事、木地作りの佳境、引き出しに取り掛かりました。

材料の寸法を出したら仕口の加工をします。

・・・

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引き出し材は桐ですが、写真のように蟻組(ありくみ)にしました。

前板の栗の突板が厚く、環境の変化(湿度)を受けて前板が反ることのないようにしたかったのです。

余談ですが、作り手の皆さんの多くの方が同じ意見と思いますが、一般的な袖机等の引き出しの大きさは、機械で蟻組の仕口を加工するのに適した大きさです。

私は、ルーター加工で完結する「丸くなった蟻型」、すなわち建築プレカットの蟻鎌の形ではなく、写真のように「表からも裏からも蟻型」にしています。

どちらの蟻組でもこれくらいの大きさが機械加工(零細事業規模)に適した大きさで、この時の加工には今では大した機械は必須ではありません。

また、蟻組は板同士の直角接合の中でメリットが大きい組み方(仕口)でもあります。

誤解を恐れずに言えば、引き出し材をネジ等で接合しているのは昭和時代の組み方ともいえるかもしれません。

もちろん、桐材の場合は形式にのっとり、3枚ないし5枚の平組の木釘打ちでもよいと思います。

同様に、仮にせっかく手加工で引き出しサイズの蟻組をするならば、蟻部を細くした「天秤組」等の手わざを配したものにする必要があります。

そんな感じで、昭和時代産の私も時代に追いついていこうとしています。

長くなりましたが、桐材なので補強と「ちゃんとやってます」の意味も込めて木釘を打ちます。

・・・コンコンコン・・・

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ちなみに、今回は引き出し容量が大きく荷重がかかるので、底板は形式通りの「下からの打ち付け」ではなく「嵌め殺し」にしました。

接着剤が乾いたら木釘の飛び出ている部分と目違いを払って、引き出しが本体に納まることを確認して、すべての木地の出来上がり。

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感慨に浸る間もなく、とっとと完成させるべく拭き漆をしました。