山乃井木工房:岩井雄介のいま何作ってましたっけ

京都丹波(京丹波町)の山村で木工をするあるつくり手の備忘録

栗の棚を作ります。

今日から栗の棚を作ります。

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写真のような幅1尺前後の栗の板3枚で作りたいと思います。

ちなみに、模様がかわっているように見えるのは栗特有の灰汁(タンニン成分)のせいでしみになっているためです。削ればなんともありません。

とりあえず、木取り(大まかにどこをどう使うか決めて印を付けること)をして切っていきます。

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耳付きの多少癖のある板でもあるので、丸ノコではなくチェーンソーで切りましょう。

ブルンブルン・・・

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切れました。

今日はここで終わりですが、ここから少し真面目な話(もちろんいつも真面目に仕事してますよ)。

私は雑木(ここでは規格材の対義語の意)が好きで欅(けやき)や栗などの広葉樹を使いますが、このような木材は特に切ってしまうと途端に価値が低下します。

下世話な例えですが、長さ2mの2万円の板をまん中で切ったからといって長さ1mの1万円の板が2枚できるわけではありません。

板は概して長尺(「ちょうじゃく」)であればあるほどその価値が高いとされます。

それは何も貨幣的な価値観だけではありません。

もともと木材は長さ方向には継ぐことが困難な性質を持っています。

ですから、今回の写真のように切ってしまったら、それはもう元の板の価値はありません。板としては著しく価値が減退しています。

木取りは切った時点でもう戻れないのです。

さらにいうなれば、切った時点ではもう完成したときの価値をある程度把握していなければなりませんし、それぞれの木・板の個性をここで見極めておく必要があります。

そのため、木取りは「親方」の大きな仕事のひとつなのです。